研究室公開

OPEN LABORATORY

物理が開く新しい世界
応用物理学コース

04

熱電材料が創るクリーンな未来

-体温の熱や排熱から電気を作る!-

宮﨑研究室

EXHIBIT

オープンキャンパスでの展示

体温発電等の熱電発電の実験をします。ぜひ見に来て下さい!

 熱電材料を用いた熱電発電は、地球温暖化ガスを放出せず、振動や騒音もないクリーンな発電技術です。温泉・エンジン・人体などの熱源に熱電材料をくっつけると電気を取り出すことができます。私たちの目標は、結晶構造(材料を構成する原子や分子の配列の仕方)を制御して高性能な熱電材料を創り、クリーンな未来を実現することです。体験コースでは体温発電等の模擬実験を通した熱電発電の実験をします。環境に優しい熱電材料の研究成果も紹介していますので、ぜひ見に来て下さい。

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環境にやさしい熱電材料の開発

 熱電材料の中のキャリア(電子やホール)の伝導を利用して、電気エネルギーと熱エネルギーを相互に変換することを熱電変換といいます。熱電材料で構成されている熱電デバイスを用いた熱電変換の原理を右の図に示します。電流を流すとキャリアが熱を運ぶため上の面が冷えます(ペルチェ効果)。逆に、素子の上下に温度差を与えると電流が流れます(ゼーベック効果)。これらの効果を利用すると、冷媒不要の電子冷却システムや、ガスを発生せず騒音・振動がない排熱利用発電システムを作ることができます。実際に、Bi2Te3半導体を用いた熱効率7%程度の電子冷蔵庫等が実用化されています。さらなる省エネルギー化とクリーンエネルギー社会の実現に向けて、私たちは毒性を持たず安価な環境にやさしい熱電材料の開発を進めています。

シリコン化合物の結晶構造と熱電性能

 資源的に豊富な元素であるMn(クラーク数12位)とSi(同2位)から構成されるHigher Manganese Silicides (HMSs)は、比較的性能の高いp型の熱電材料です。無毒で低コストかつ1000 Kまで耐酸化性が良好という特徴を備えています。 
 HMSsの結晶構造はNowotny-chimeney-ladder型構造です。Siサイトが円を描くように大きく変位変調した複雑な構造で、これまでMn4Si7、Mn15Si26、Mn11Si17など様々な組成のHMSsが報告されていました。 私たちはこのHMSsを、[Mn]部分構造と[Si]部分構造から成る複合結晶で、(3+1)次元の超空間群(I41/amd(00γ)00ss)に属すると仮定することで、MnSiγ (γ~1.7)という形で包括的に取り扱うことができることを明らかにしました(右図参照)。ここで組成比γは[Mn]部分構造と[Si]の部分構造のc軸長比であり、元素置換や合成条件によって変化する無理数であらわされます。これにより元素置換による系統的な組成最適化が可能となりました。私たちはp型試料の性能向上やn型試料の創成に成功しており、それらを用いた熱電デバイスの作製を進めています。