研究室公開

OPEN LABORATORY

コミュニケーションの未来
電気通信研究所

07

光を用いた量子情報通信

光と量子力学を駆使した量子情報通信技術研究の最前線

枝松研究室

EXHIBIT

オープンキャンパスでの展示

光子の不思議〜光は波?それとも粒子?

原子や電子などのミクロの世界は,量子力学という物理の原理に従っています。それによると,光は波(電磁波)としての性質と粒子(光子)としての性質を併せもっています。私たちは,光の量子力学的性質を利用した新しい情報通信技術(量子コンピュータ,量子暗号など)や計測技術を創造するための研究を行っています。展示では,ナノ光ファイバーなどを用いた最新の研究をご紹介します。

スマホアプリが研究室をナビゲート

SmartCampusへ

光子を用いた量子サイコロ〜ダイヤモンドから無偏光単一光子を発生〜

量子コンピュータや量子暗号など,現在の古典情報通信技術を凌駕する可能性をもつ次世代情報通信技術として期待されている量子情報通信技術において,単一の光子は特に重要な役割を有します。量子情報通信における情報の基本単位である量子ビットは,単一光子の偏光を用いて実現されており,従来は,純粋状態と呼ばれる特定の偏光をもつ状態のみが主に利用されてきました。一方,個々の光子の偏光が全くランダムで特定の偏光をもたない,すなわち静的にも動的にも「無偏光」な状態にある単一光子は,物理的な真性乱数の発生や量子暗号通信への応用,あるいは量子測定などの量子力学の基礎問題の検証においてたいへん有用であると期待されています。しかしながら,そのような静的かつ動的な無偏光性を示す単一光子の発生はこれまで確認されていませんでした。私たちは,結晶面を工夫したダイヤモンド結晶中の不純物欠陥(NV中心)から発生する単一光子が,静的にも動的にもほぼ完全なランダム性をもつ無偏光状態にあることを検証することに世界で初めて成功しました。今回の成果は,光子を用いた真性乱数発生器(例えて言えば量子サイコロあるいは量子コイントスともいうべきもの)の実現や量子暗号の技術開発,および量子力学の基礎問題の検証に重要な役割を果たすことが期待されます。
阿部尚文(大学院博士後期課程修了,博士研究員)

ナノ光ファイバーを用いた量子光学・量子情報通信デバイスの研究

私は、現在の光通信で使われている光ファイバーの一部を100 nm(1万分の1 mm)程度にまで細くした「ナノ光ファイバー」を作製・利用する研究を行っています。このナノ光ファイバーの面白いところは、ファイバーの細くなった部分に光の粒子(光子)を放出する分子やナノ粒子(量子ドット)を置くと、放出された光子がファイバーの中に吸い込まれ、ファイバーを通じて光子を取り出したり、他のデバイスに送り届けたりすることができるようになることです。この性質を用いると、量子力学の原理を用いた新たな情報通信の構築に役立つと期待されています。
光は私たちにとって身近なものですが、物理的にはまだまだ分かっていないことも多く、この光の謎に国際色豊かな研究室のメンバーと議論を重ね、最先端の実験で立ち向かっていく日々はとても刺激的で、驚きの連続です。
菅原大和(大学院博士後期課程2年)

こんな格好で研究しています

私たちの研究では多くのレーザーを使います。レーザーを使った実験の際には,強力なレーザー光から目を保護するためのレーザーゴーグルを装着して研究しています。