私たちの生活は多様な有機分子によって支えられています。有機分子の性質や機能は、構造のわずかな違いによって大きく異なる場合があります。そのため、形や構造が類似した有機分子を精密に分離したり検出したりする技術は、私たちの生活に欠かすことのできない医薬品や電子材料等の工業製品を製造する上で重要であり、持続可能な社会を実現する上で重要です。私たちの研究室では、有機合成や分子認識の化学を駆使することで、このような技術を可能とする新しい有機分子や方法論の開発に取り組んでいます。
　分子認識とは、様々な分子間相互作用により、特定の有機分子を捕まえる現象のことを指します。分子認識能を有する分子の一例に、フェノールが環状に連結することでお椀のような形をとるカリックスアレーンがあります（図１左）。例えば、私たちの研究室では、この分子の結晶を用いて有機分子を認識・分離する研究をしています。この結晶は構造を変化させながら、有機分子を吸収するという不思議な性質があります（図１右）。これを利用することで、分離が難しい有機分子の混合物の中から一つだけを取り出す方法を開発しています。他にも、分子認識の情報を発光応答というかたちに変換する分子についても研究しています（図２）。オープンキャンパスでは、①構造の違いにより性質が大きく異なる有機分子の例、②結晶を用いた有機分子の分離や発光の変化を利用した有機分子の認識、について紹介します。